「収入が減ったリタイア後にどこに住むか」
「とにかく住居費をかけないために山奥の小屋に住もう!」
今回は、リタイア後の住まいを考えるシリーズで、住居費用をとことん削減して行き着く先である小屋ぐらしです。
対照的な都内に住む場合の記事はこちらです。
最初に結論を書きますが、小屋ぐらしは無理です。
長期キャンプという認識で数ヶ月くらいならいいかもしれません。というか、まずは別に住居を確保しつつ、そのくらいから始めるべきです。
メリット
家賃がかからない
家賃はかかりません。メリットのほとんどはこれに尽きます。娯楽費も、まあかからないでしょう。そもそも買える場所がないのですから。ただ、小屋やその敷地にも固定資産税はかかります。
人間関係もない(?)
一人で山奥にこもっていれば、そもそも地域のコミュニティすらないので、人間関係からは完全に解放されます。田舎独特の陰湿なコミュニティからも離れた生活が可能、と言われます。
ただ、本当に誰とも関わらずに一人で生きていくことができるのかはかなり疑問です。食料調達や住居資材の調達などはどこで行うのでしょうか。買い出しをする際など町とのつながりは必要なのではないかと思います。
実際のところ、行政や地域コミュニティに対して、かなり根回しというか理解を得ておかないと、有形無形の障害が出てくるのではないかと思います。いきなり自分の町の近くの山に得体のしれない人間が住み着いたら、相当警戒されて当然です。
自然豊か
というか自然しかありません。毎日がキャンプです。人混みも無縁です。騒音などを近所に配慮する必要もありません。美しい自然に囲まれて癒やされるでしょう。

部分的に自給自足できる
畑で食料を作って自分で食べることも可能です。食費が助かります。作物を育てること自体に楽しみを見つけることもできるでしょう。

しかし、必要な食料すべてをまかなえることは、ほとんどないと思います。すべてまかなうには相当の規模で行う必要がありますし、交換や売却がどうしても必要になるはずです。そうでなければ、栄養が偏ります。
デメリット
建築・修繕・維持費用
0から建てるにしても、既存のものを使うにしても、相当の材料費・工具代・運送費などがかかります。維持費用も馬鹿になりません。100万円から300万円程度はかかるようです。初期費用は、都内の賃貸に引っ越すより高いですね。

膨大な手間
まず住むまでがものすごい手間です。相当の期間、相当の手間と費用をかけないと住居として成り立ちません。
生活していく上でも、生きるだけで精一杯です。食料の調達するだけでもスーパーが近くにあるわけでもないので、遠方まで買い出しに出かけるか、自給するしかありません。それが楽しいということでなければ、なんのために労働から逃れたのかよくわかりません。
工事などの手間をプロに任せるのも選択肢ですが、そういう僻地の案件を請け負う業者は限られるので、相当高くつくことを覚悟しておくべきです。
車が必須
山道を数時間歩いて物資を調達するなんてあまりにも非現実的なので、自動車の所有が必須です。家は原始的なのに車は買う、というのもかなりバランスを欠いている気がします。ガソリン代など自動車に関わる費用がかかります。
そのうち、車の中で生活したほうがマシなんじゃないかと思い始める気がします。
貧弱なインフラ
電気・ガス・水道・通信です。ガスはなくても良いのかもしれませんが、電気・水道は必須だと思いますが、安定供給される保証などありません。井戸って本気ですか?止まれば、本当の原始生活をすることになります。

通信は必須だと思います。緊急事態に助けを呼べないと簡単に死にますし、孤独で誰とも話さず外部の情報を得られないと病みます。当然、高速な環境など望むべくもありません。
劣悪な住環境
結局、小屋ぐらしを諦める最大の原因は、単純に住環境が悪くて体調を壊すことだと思います。
最大の課題は、断熱です。普段しっかりした家に住んでいると気が付きませんが、日本の四季は凶悪です。酷暑と厳寒(降雪)の両方をさけられる地域はありません。薄い壁、地面から直撃する暑さや寒さで体を壊します。断熱が弱いと暖房もききません。暑さへの対処法はさらに限られます。扇風機程度ではなんともならないでしょう。暑さ・寒さは睡眠を妨げます。
湿気も強力です。いつまでも水がはけません。木材も金属も十分な処理をしていないと腐食します。湿気は食料もたやすく害し、衛生面にも重大な悪影響を及ぼします。これらは、深刻な健康リスクになります。
災害に脆弱
災害に弱いです。台風・地震・山火事・洪水などで簡単に吹き飛びます。さらに、家がなんとか無事だったとしても、か細い補給路が土砂崩れや倒木で寸断されればアウトです。停電も起きやすく長引きやすいでしょうし、井戸が壊れたりするなど、インフラも断絶しやすいです。
日本は災害が多いので、これも小屋ぐらしを継続する心が折れる大きな要素だと思います。一度壊れた小屋とインフラを、もう一度立て直してまで住み続ける気力があるひとはかなり少ないです。
もちろん、災害で自分が怪我したり死ぬリスクも普通の家屋より遥かに高いです。
病気・怪我が命取り
健康リスクに対しても弱いです。劣悪な住環境で体調を崩しやすいうえ、簡単に受診ができないので病気を悪化させやすいです。一人で倒れたときに救急を呼ぶことができなければジエンドです。定期通院が必要になったことで小屋ぐらしを諦めた人も多いのではないかと推測されます。
泥棒・強盗に全力ウェルカム体勢
防犯機能は皆無です。ネットで情報発信していれば、どんなに気をつけていても、そのうち場所がバレます。リタイアのためのまとまった資金をもっている人間が、大した鍵もかからないどころか壁だって簡単に壊せるようなボロ小屋にひとりで住んでいるわけです。しかも、まわりには人目がまったくないので犯行もバレません。もう、間違いなく秒で襲われます。
現金をもってなくても、拷問されて口座情報を吐かされます。殺されて埋められても誰にも発見されないでしょう😨
爆速で劣化
小屋なんてあっという間に劣化します。なんとか手間ひまかけて、一見綺麗に仕上がったとしても、素人の仕事なんてすぐにボロが出てきます。四季を一回り耐えられたら十分なんじゃないでしょうか。長くても数年ごとの立て直しを見込んでおく必要があります。
老後のビジョンがまったくない
老後はどうするつもりでしょうか。大昔の自然に生きていた時代は、家族がいたから生きていられました。
老人ひとりで山奥は完全に詰みです。自然のなかで眠るように静かに終りを迎えられる、と思ったら大間違いです。簡単に死ねません。そういうきれいな死に方というのは、病院という施設と医療スタッフがいてはじめて成り立つものです。山小屋での死は、病気や老衰そのものではないです。まず体が動かなくなったことによって、食料・水・燃料を調達できなくなり、悶え苦しみながら栄養失調・脱水や低体温で死ぬことになります。大迷惑です。
まあ、実際はそんな事態に至ることはほとんどないと思います。老後よりももっとずっと前の段階で、小屋ぐらしを諦めることになるからです。
虫!
虫と同居することになります。自然のなかで虫は絶対避けられません。無理です。マジ無理。

期間限定のレジャーとしての選択肢でしかない
「リタイアしてやりたいことがある」という人にはまったく向きません。その「やりたいこと」が「キャンプみたいな生活そのもの」でない限りまったくオススメしません。
そして、たとえそのような趣味の人であっても、長期的にこの生活を継続させるのはほとんど不可能です。人生の一時期だけのレジャーとしての選択肢以外はありえません。最初からそう思っておけば、必要以上の費用をかけたり、あるいは人間界とのつながりを断絶してしまうことなく、戻ることができます。
あるいは、真夏や真冬は、別の住居に住むということをしている方もいます。まあ、きっとそのうち、真夏や真冬だけでなくて、梅雨の時期・台風の時期・花粉の時期と、だんだん小屋に住まなくなっていくと思います。
自然の中の暮らしは不自然な生き方
結局、小屋ぐらしを「便利にしよう」「快適にしよう」と創意工夫を重ねるほど、小屋ぐらしにこだわる理由がわからなくなってきます。自然の中で生きることが、逆説的ですが非常に不自然な生き方だと思えてなりません。
この「小屋ぐらし」の発想には、都会のホームレスとの比較が根底にあるように思います。路上で生活するのはみじめだから、自然の中の小屋ぐらしのほうが人間らしい生活だというのは、まあ理解できなくもない発想です。

しかし、ホームレスのほうがまだ行政などの危機介入によって助かることもあります。歴史的にも貧民が都市に集まってたくましく生きたように、資力がないのであればこそ、人の力を借りられる場所、豊かさの近くにいたほうがいいです。社会の成長、文明の恩恵のおこぼれをしっかり利用して生きていくべきです。それに背を向けるのは経済的な独立ではなく、単なるヤケになった世捨て人です。
貴重な現金を粗大ごみとなったボロ小屋に浪費しただけで、状況がより悪くなってから都市に戻る、なんてことのないよう冷静に考えましょう。
ありがとうございました。ぼくには小屋ぐらしの選択肢はありえません。でも、長期キャンプはいいですね😃
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