「好きなことを仕事にしたい!」
「趣味に関わる業界で働きたい!」
「給料が安くても好きな仕事なら頑張れる」
今回は就職をするに当たって、好きなことを仕事にするのがよいのか考えます。
1日の大部分を仕事に使うのであれば、好きなことで働きたいという考えは自然です。しかし、それは正しいのでしょうか。
自己紹介🐷
新卒での就職活動では、趣味の業界の仕事も探していました。結局、仕事自体には興味がないですが、給与と時間的余裕がそこそこある仕事につきました。
10年以上人事の担当をしており、新卒・中途の採用も経験、数百人の面接も行ってきました。
好きなことはすぐに仕事にしないほうがいい
結論は、好きなことをすぐに仕事にするのは、避けたほういいです。
FIREを達成までの軌跡と考え方が紹介されているこちらの書籍では次のように書かれています。
(まだ)自らの情熱に従うな
クリスティー・シェン; ブライス・リャン. FIRE 最強の早期リタイア術――最速でお金から自由になれる究極メソッド ダイヤモンド社.
筆者は大学進学で専攻を選ぶに当たって、本当にやりたかったライティング(作家・文芸)ではなく、期待年収を基準にコンピュータ・エンジニアリングを選んでいます。そして、十分なお金を稼いで仕事をやめたあとに、いまは旅行をしながら、やりたかった作家業をしています。
これが、目指すべき道です。つまり、順番が大事です。
リスクが高い
人気のある仕事は待遇が低くなりがち
あなたの好きな仕事は、他の人も好きな仕事ではないでしょうか。つまり誰にでも、人気のある仕事ではないでしょうか。エンターテインメント系・スポーツ系・旅行系などです。
人気のある仕事には黙っていても就職希望者がやってくるので、会社は待遇を向上させるインセンティブが低くなります。そして、実際に低い待遇で、情熱によって猛烈に働く労働者でなりたっている業界全体で、それが当たり前になっていきます。やりがい搾取の構造になりやすいです。

会社に務める場合でも、好きなことにこだわると苦しいですが、フリーランスでやっていこうとするとさらに厳しくなるのは言うまでもありません。
好きじゃなくなる
いま好きなことでも、これから先もずっと好きでいられるでしょうか。
あなたが今好きなことは、何年前から好きですか?5年前はもっと別のことが好きだったんじゃないでしょうか。5年後に、興味が変わっていないとどうして言い切れるのでしょうか?
職業にしないとできないことですか?職業にしたらできることですか?
好きなことを仕事にしたいと思うと、周りが見えなくなり、冷静さを失います。
野球が好きでも、プロ野球選手になれない人が大多数です。それならばと、少しでも野球に関わる仕事がしたいと、スポーツ用品メーカーに就職するのはどうでしょうか。

これもよくある考え方ですが、判断を歪めるのでオススメしません。
たとえば、スポーツ用品メーカーで経理をするのも、まったく興味のない工具メーカーで経理をするのも変わりはありません。もし工具メーカーのほうが給与が高くて残業や休日出勤が少なければ、迷わず工具メーカーを選ぶべきです。
日曜日に休日出勤をして経理処理をしているスポーツ用品メーカー社員と、週末にはしっかり休めてアマ野球を楽しんでいる工具メーカー社員、どちらが野球好きとして幸せでしょうか。
特にエンタメ系などの業界では、上流の花形トップだけが儲けて、下流・裏方は非常に厳しいというのはよくある構造です。商品にこだわると苦しいことになりやすいです。
でも、職業にしないとできないこともある
もちろん、仕事として携わらないと経験できないこともあります。ただの消費者側では見えないこともたくさんあると思います。でも、それが本当に自分のキャリアを危険にさらしてまで手に入れたいことでしょうか。

「憧れの人と一緒に仕事ができた」「裏側の仕組みを知ることができた」そんな供給側での経験は、最初は高い満足感と優越感を持てるかもしれませんが、逆に嫌なところもたくさん知ることになります。そして、どろどろした裏側で自分の犠牲を経て、きれいな上澄みだけが世に出ていると認識した時、その良いところどりだけができる消費者の立場が恵まれていることに気がつくかもしれません。
「後から業界に入ることは難しい」、「絶対に業界で働かないと一生後悔する」というのであれば、いきなり好きな業界に入るということも止めません。人生をリスクに晒すという認識をしっかり持った上で選択するのが重要です。
「なりたい」と「やりたい」は違う
大人は子どもにこう質問します。

将来何になりたい?
しかし、いまはこう自問すべきです。

将来何をして生きていたい?
なりたいものになれなくても、やりたいことをして生きていくことは可能です。上記の工具メーカーのように、野球と関係のない仕事をしてても、余暇にアマチュア野球を楽しむのも幸せな人生です。
「絶対野球選手にならなくちゃ」「はしっこでも野球業界人にならなくちゃ」そんな「なりたい」ものをそのまま追いかけると、「やりたくない」仕事で人生がいっぱいになるリスクが高いです。小学生の発想をやめて、何になりたいかでなく、何をして生きていたいかを考えましょう。
順番が大事
もういちど、『FIRE』に戻ります。
私は、何1つ後悔していません。
クリスティー・シェン; ブライス・リャン. FIRE 最強の早期リタイア術――最速でお金から自由になれる究極メソッド (Kindle の位置No.637). ダイヤモンド社
好きなことは、経済的な自立ができるようになってからしましょう。そのほうが自由にできるので、好きなままでやり続けることができます。
逆に、最初に好きなことを仕事にすると、後がなくなりやすいです。それでもチャレンジしたことで「後悔していない」と言えればいいです。ただ、生活やキャリアが壊れてしまえば、好きでなくなってしまうかもしれません。残ったものは「後悔しかない」となっては不幸です。
ぼくも、今の仕事はまったく興味がないです。10年以上働き続けて資産を形成を継続できているのも、好きなことではなくて、給与や待遇で仕事を選んだからです。

この間、好きなことを仕事にした人を見て羨むこともありました。しかし、蓄積してきた資産のおかげで、好きなことを自由にできるリタイアが手に届くところまで来ました。リタイアを達成できたときには胸を張って「後悔していません」と言えるようになりたいです。
「夢」とか「好きなこと」みたいな曖昧なものを、しっかりと具体的に自分の生活に引きつけて考えていくのが大切だと思います。ありがとうございました。
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